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雨だ。
しかもその雫は大粒で、あっという間に砂利道を黒く染めた。
「やばい、走るぞ!」
俺も創一も荷物をとって一目散に走り出した。
散乱銃のような雨が俺たちに降り注ぐ。
冷たい。寒い。痛い。
雨に対し様々な思いを巡らせる。
この状態が最悪なことはいくらガキでもわかっていた。
創一の店にいくのも、家に戻るのも、こんな中間の距離ではどっちに向かってもびしょ濡れになることは変わりない。
「走れ、悟!」
創一は自分の上着を頭にかけながら俺を呼ぶ。
猪突猛進タイプの創一は戻るというのを最初から頭に入れていなかったようだ。
瞬時にできた水たまりの上をバシャバシャと走りながら、俺たちは突き進む。
空からはゴロゴロと不穏な音が鳴る。
そこから間待たずして光る稲妻と黒い雲をカッと照らす強い光と何か墜落したのではないかと思わせるような大きな衝撃音に俺たちはつい足を止めて、悲鳴をあげた。
「創一、木の下にいよう」
この雨と雷のもとで下手に動くよりはいいだろう。
できるだけ大きな木で雨宿りをし、雨が止むのを待つのだ。
創一もそれは賛成のようで、避難に適した木を探す。
辺りをきょろきょろと見回す俺たちだが、秋だったのが運の尽きか、腐葉土でどろどろな上にこの大雨だ。
どこもかしこも雨宿りするには居心地が悪そうだった。
「おい悟、あれ見ろよ」
そう言って創一が指したのは林の奥の奥。
俺は彼が指したところを凝視した。
だが、黒い影が見えるが遠すぎて何があるのかがわからない。
「なんだろあれ、行ってみようぜ」
好奇心に負けた創一はその影のほうへ走り出した。
「待てよ!」
だが、いくら俺が声をあげても創一は聞かない。
そうこうしているうちに雨は益々強くなる。
立ち止まったら創一との距離も広がるし、俺自身も迷っている暇はなかった。
慌てて創一を追いかける。
いつものコースを外し、林の奥へ奥へと突き進む俺たち。
ズボンの裾はすでに泥だらけだ。
だが、進めば進むほど、創一が見た影の正体も明らかになる。
「あ!」
現れたそれを見て俺も思わず声をあげた。
そこにあったのは木造でできた三角屋根の小屋だった。
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