種岡亮太と狼少年

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* * * この時俺は、つくづく自分の甘さを呪った。 大学の講義とは単位が取れやすいものとそうでないものがある。 選べるのだから、どうせなら単位が取りやすいものを選びたい。 それは、学生誰もが思うこと。 しかし、取りやすい単位かそうでないかというのは、講義のカリキュラムだけでは判断できない。 では、どうするか。 すでに講義を受けた学生から情報を収集するのだ。 こうなるとサークルの先輩が頼りになるのだが、生憎俺は加入してない。 だから、俺たちの中で唯一サークルに入っている統吾が要になる。 統吾も考えていることは俺と一緒で、先輩たちから様々な情報を集めてくれた。 その情報と必修科目と照らし合わせながら、俺たちは時間割を作って行く。 この時、俺は統吾の言葉を鵜呑みにしてしまったのがそもそもの間違いだった。 楽して4単位も貰える教育学の科目。 ろくにカリキュラムも見ずに選択した俺が馬鹿だった。 この講義に実習があることなんて、全く考えていなかったのだ。 統吾は言う。 「子供と遊んでちょっとレポート書けば4単位もくれるっていいもんだよね」 だが、俺にとってこの"子供と遊ぶ"というのが難関なのだ。 百歩譲って幼少期の天使のような可愛らしい時期ならいいだろう。 しかし、小学生というクソ生意気なガキの相手をするのは本当に勘弁だ。 俺は子供の扱いが苦手だから。 なのにだ。 選りに選って、俺たちの実習先は学童保育だった。 学童保育とは、共働きなどの理由から放課後一人でいる時間が多い小学生を公民館などに預ける制度だ。 放課後児童クラブとも言う。 最初のひと月は座学で実習概要や下調べで週に2コマも使った。 が、これからはこの2コマで実習先の学童保育をやっている公民館にいかなければならない。 つまり、俺は週2のペースでガキンチョたちの世話をしなくてはならないということだ。 統吾と悟もいるとはいえ、不安でしかない。
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