種岡亮太と狼少年

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そんな優秀な2人に比べて俺はだめだ。 子供たちに話しかけようにも話すこともないし、何して遊べばいいかもわからない。 悟は子供に呼ばれたので彼らの方へ行ってしまった。 相変わらず統吾は子供とはしゃいでいるし、こうなると俺も手持ち無沙汰だ。 仕方なく、俺は近くのブランコに腰を下ろした…はずだった。 そこにあったはずのブランコの板がなく、俺はそのまま滑り落ちて尻餅をついてしまったのだ。 「いってー!」 予期せぬ出来事に俺は声をあげた。 痛む尻を押さえ、慌てて辺りを確認すると、俺の後ろに中学年くらいの男の子が3人いた。 俺が座るはずだったブランコの板を持ったまま、尻を打った俺を見てにやにやと笑っている。 「あんのやろー…」 こいつら、俺が座るタイミングを見計らって咄嗟に板をずらしやがった。 そして、まんまと引っかかった俺を見てあざけてやがる。 そんな俺の殺気を感じたのか、クソガキ共は俺の顔を見た途端走って逃げた。 「待てこのガキ共ぉぉぉ!」 俺は尻の痛みに耐えて立ち上がり、すかさずそいつらを追いかけた。 「20歳(オトナ)をナメるなぁぁ!!」 声をあげて迫りくる俺を見て、ガキ共はギョッとし、 一目散に駆け出す。だが、元運動部がこんな小学生に負けるわけがない! 俺はすぐに追いついてガキの首根っこを掴んだ。 一人捕まえたらこっちのもんだ。 「こいつがどうなってもいいのかな?」 へっへっへ…と悪役っぽく笑ってみせる。 すると他のガキも動きが止まり悔しそうに俺に吠えた。 「汚いぞ! 大人のくせに!」 「ふん、大人というのは汚い生き物なんだぜ。なんせ社会は理不尽でできているからな。覚えておけよクソガキ」 あーだこーだ言ってくるガキ共に俺は鼻で笑ってやった。 「さ、あとは然るべき人に罰を与えてもらうだけだな」 俺は残ったガキ共の服の首元や手を掴み、職員の元へ連れ出す。 そんな俺の行動はガキ共からブーイングを食らった。 「先生にチクるなんてずるいぞ!」 だが俺は腕を組んで言い放つ。 「あんなこと他の子にやったら怪我するだろ! いいから先生に叱られてこい!」 ギャーギャー言い争う俺とガキ共の声は公園中に響き渡っていた。 「なんだ、種岡も楽しそうじゃん」 そんな俺を見て統吾がこぼす。 あいつはこれのどこを見て言ったのだろうか。
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