―参―

3/4
前へ
/18ページ
次へ
何故私は廊下へ出たのでしょう…? ただ衝動に突き動かされるままに 廊下へ出てしまったのです。 月が綺麗で 夜なのに無数の蝶がいました。 そして目の前には―… 黒い着物を纏った女の子が居ました。 二階だと言うのに 何処へ立っていたかは やはり覚えていません。 その子は手に、鮮やかな緋色の毬を抱きしめ 私を見ていました。 私も食い入るように ただ女の子を見ていました。 間近で見る瞳は 深く、深く、誰も映してはいませんでした。 彼女の瞳は私を見ていましたが、その瞳は私は映してはいませんでした。 ただ誰かを恨むように ただ誰かを憎むように ただ誰かを怨むように ただ誰かを妬むように ただ―… そして 彼女はぽつりと呟くと 首を傾げ… 首を堕としました。 ゆっくりと首は堕ち、彼女が持っていた鮮やかな緋色の毬も首と共に堕ち 彼女の手には毬の代わりに 彼女自身の首が収まりました。 その時彼女の発した言葉を 私は絶対に忘れないでしょう。 いえ 忘れられないでしょう。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加