―弐―

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葬式が終わる前に私は、葬式を抜け出してしまいました。 あの時の私は抜け出すという感覚はあまり有りませんでしたが… 大きなお屋敷の廊下に出て外を見ると 其処からでも海が見えました。 外に直接面している廊下なので 風が入って来て心地良かったのです。 その時やっと さっきの女の子の事を再び思い出しました。 あの子は誰だったのでしょう? 勿論七歳の私は、あの子が何処に立ってたかなど 気にも止めませんでした。 あの子が何処に立ってたか思い出そうと思ったのは、今になってです…。 『何を見てるの?』 声をかけられ、私は驚きました。 女の子が隣に立って居たのです。 私より年上の、髪の長い女の子でした。 電車から見えた女の子では有りません。 『…海』 私は人見知りの激しい子だったので 挨拶もせず、可愛げもなく ただ聞かれた質問にぽつりと答えました。 『海…?海を見ているのね。何か見えたかしら?』 女の子は私の言った言葉を復唱すると再び聞いてきました。 何か見えたかしら?という質問に 電車から見えた女の子が思い出されましたが、頭を振りきり 女の子の事は話さない方が良い、と本能的に思いました。 『…海が見えた』 海を見ているから、海が見えるのは当たり前なのですが 事実何が見えたか聞かれたので こう答えました。 しかし女の子は、その解答に納得すると 私の隣に腰を下ろしました。
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