―弐―

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夕方になりました。 外には祖母が亡くなった時と違い、赤い海が景色を飲み込んでいました。 広間にも、数える程しか残っていませんでした。 私の母も片付けをしていて とても私に構ってくれるような状況では有りませんでした。 私は一人、昼間座っていた廊下に座って 赤い海を眺めて居ました。 すると 昼間の女の子…千紗都が隣に腰を下ろし、独り事のように喋り始めました。 『今日亡くなったお婆ちゃまが言ってたの』 『鬼が来ても返事をしちゃいけないって』 『鬼は返事をさせるように仕向けて来るけど』 『返事したら殺されるって』 その話なら、私もお婆ちゃまに聴いていました。 だから夜…十二時を過て、鬼が来て、鬼に名前を呼ばれても 返事をしてはいけないそうです。 返事をすると 殺されるらしい もっとも昔話の類 気に止めていたらきりがないのですが 『黒い着物の女の子は』 『迎えに来るんだよ』 『絶対』 そう言い残すと、千紗都は何処かへ行ってしまった。 脅しだったのかもしれないけれど 私はどうしていいのか解らずに 途方に暮れて居ました…
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