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目まぐるしい槍の動きの中、
恒興の槍が宙に舞った
・・と、思ったその時、
忠勝の槍が 恒興の胸板を
突き抜ける。
う・・
私は思わず、目を手で覆う。
恒興「み、見事・・
見事じゃ!
ハハハ・・!
見事じゃ! 見事!」
実は私は
目を覆った指の間から
しっかりと見ていた・・
恒興は笑いながら、
見事、見事と繰り返す。
忠勝「お主も見事であった
安かに眠られい・・
池田恒興殿・・」
と、槍を抜き目を閉じ
南無阿弥陀仏と手を合わし
一礼をする忠勝。
次の瞬間、
恒興が、バサリと倒れ
彼の兵たちは
蜘蛛の子を散らしたように
逃げ出す。
恒興「じゃが・・
わしを討ち取っても・・
形勢は・・
変わ・・ら・・ん・・」
と、息絶えた恒興。
確かに、彼を討ち取っても
全く形勢は変わらない。
今更、
この軍を立て直すのは
無理だ。
まずは小牧に
逃げ延びねば・・
話はそれからだ。
忠勝「姫、ここは
それがしが、
引き止めますゆえ、
お逃げくだされ」
「承知」
私は再び馬に乗ると
手綱を握る。
「忠勝・・死ぬでないぞ。
危うくなったら
逃げよ・・
武士の魂など
役には立たん。
逃げて命を繋げ、
次に活かすのじゃ。
それが主君のためと
心得よ」
と、私が言うと
忠勝は何も言わず
無言で追っ手に
突っ込んでいった。
そして 私は
馬を蹴っ飛ばし
小牧へと数名の兵と
ともに 駆けゆく。
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