第十六章 逃避行

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男「良い馬じゃのぅ!  さすが今川の姫君が乗る  馬じゃ!」 男は手綱を扱きながら 驚嘆して叫び散らす。 「お主、名はなんと申す?」 才蔵「ん?ああ、才蔵じゃ  可児才蔵」 といい、笹を口にくわえる。 「ほう・・  しかし 何故   今川に仕官したいと  思ったんじゃ?」 才蔵「それがしは  美濃は斉藤家に  仕えておったがのー  斉藤のドラ息子が  織田にやられて、  仕方なく 織田の配下に  なったんじゃ!  じゃが、  織田とも馬が合わん。  柴田殿や前田殿は  それがしがいくさで  奮迅しても 一向に  取り立ててはくれぬ!  じゃから、今川に  付くことにしたんじゃ!」 粗暴だから、 出世できないんだろうな・・ と、私は思った。 口調も、全く 私に対して、 敬うことなど無い。 上司に嫌われるタイプでは あるな・・うん。 「さようか、よし  小牧まで  無事辿りつけたら、  お主は足軽大将じゃ!」 才蔵「おお、姫!  さすがじゃなぁ!  ハッハッハッハ!」 と、子供みたいに ワクワクした様子で 馬を走らせる、才蔵。 頭は悪そ・・ 才蔵「しかし、姫!  先ほど、  富士の狐に育てられた  狐巫女じゃと  申したが、   それはまことか?」 は? 「あ、いや・・  うん・・まあ・・」 と、うやむやに返答。 才蔵「実は それがしも  天狗に育てられたんじゃ!  お互い、物の怪同士  気が合うのぅ!  アーッハッハハ!」 やっぱ、馬鹿だ・・ コイツ・・
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