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ホテル担当者との挨拶を終えた宥志が会議室に姿を現したのを、征紀はいち早く見つけた。
「お疲れ、宥志」
満面の笑みを浮かべて駆け寄ってくる征紀を、苦笑を浮かべながらも宥志は待った。
「待たせたな」
「ううん?
宥志こそ、ご苦労様。
こっちも今さっき部屋ごとに列ばせたところだから」
「注意事項の確認とプリントの配布は?」
「プリントは、今、志乃に配ってもらってる。
注意事項の確認は、牧野に任せてあるから心配要らないよ」
宥志の問い掛けに、征紀は満面の笑みもそのままに淀みなく答えた。
「そうか」
そんな征紀に満足げに頷いて、宥志はホワイトボードの前に立つ牧野に歩み寄る。
「牧野」
「あ、会長。
お疲れ様です」
宥志のよく通る声に振り向いた牧野が、ほんわりと笑みを浮かべて手を振った。
「お疲れ。
志乃は?」
「もう戻ってくると思いますよ?」
合宿ということで浮き足立っている生徒が多いせいか、思っていたよりも狭い会議室は騒がしい。
会議室と言うよりは大広間に近い部屋は、当然だが、見渡す限り男で溢れかえっている。
そんな生徒たちを見渡す宥志の視界に、志乃の姿が映り込んだ。
とても高校一年生には見えないほど、完成した身体つきをしている志乃は、配り終えたプリントの余りを片手に戻ってくる。
「志乃。お疲れ」
「あれ、御神会長。
戻ってたんすか?」
「ああ、今しがたな」
志乃が合流して、生徒会幹部が勢揃いすると、不思議と会議室は静かになった。
それほどまでに、今期生徒会の存在感は圧倒的だった。
キン…と、小さくマイクがハウリング起こし、次いで牧野の優しげな声がスピーカーから流れ出る。
『あ--…皆さん。聞こえてますか?』
牧野が小首を傾げて問い掛ければ、其処此処から感嘆のため息が聞こえてくる。
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