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学院きっての『姫』と称されるだけに、牧野の笑顔は生徒たちに絶大な人気を誇っている。
俄かに騒がしくなった会議室を見渡して、牧野は生徒たちに微笑みかけた。
『ちゃんと聞こえているようですね。
それでは、今から合宿中の注意事項と、その他の説明を行います。
質問は、説明後にまとめて伺いますね』
書記と言う肩書きに関係なく牧野がマイクを握るのには、訳がある。
牧野に限らず、今期の生徒会に於いて、幹部の肩書きは何ら意味のあるのもではなかった。
それと言うのも、宥志が肩書きに関係なく適材適所を見極めて人員を配置するが故だ。
六百人を超す人数を全て黙らせるのは到底不可能な話だが、六百人を超す人数に注意を向けさせることは、案外簡単だったりする。
教師も生徒も全てが男という、男子校ならではの不毛な空気には、華を添えてやればいいのだ。
牧野の外見は、まさしく『華』と呼ぶに相応しい。
牧野が書記として生徒会に籍を置くのは、容姿が可愛いからだけでは勿論なく、全校生徒を前にした、こういう時にこそ、その力量を発揮する。
その儚げな容姿で男どもの注意を惹き、なお且つ言うことを聞かせられるという点で、生徒会幹部で牧野の右に出る者はいない。
だからこそ宥志は、牧野を幹部として側に置いていた。
六百余名の中から、会長以外のたった三名の幹部を選び出すのは至難の業と言っても過言ではないかもしれない。
だが、宥志がそれを遣って退けた結果が、最強と噂される今期生徒会なのである。
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