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宥志率いる生徒会は、生徒主体の学校運営をモットーとする統稜学院に於いて、まさしく院内最高の権力を握っていると言えた。
その分、有事の責任も重い。
「以上で説明を終わりますね。
何か質問のある方、いますか?」
問い掛ける時に小さく小首を傾げる仕種をその辺の男がやったなら、本気で殴りたくなるほど気色悪いだろうが、牧野にはそんな仕種がよく似合っていた。
「いませんね?
それでは、これで生徒会からの説明は終わります。
夕食は七時半からですので、それまでは各自自由に行動して結構です。
ですが、他のお客様の迷惑になることだけはしないで下さいね。
それでは、解散」
牧野の言葉によってぞろぞろと会議室を出て行く生徒たちを、宥志ら幹部は静かに見送った。
「御神会長」
「何? 志乃」
横合いから声を掛けられた宥志がそちらを振り向けば、そこには今年度から生徒会に在籍の志乃貴火が立っていた。
「俺達も、今日はこれで解散っすよね?」
「ああ。
夕食まで予定はねぇよ」
合宿中の生徒会の予定を、宥志は完璧に記憶している。
志乃の問い掛けにもそう即答すると、宥志はすでに半数以上生徒たちのいなくなった会議室を見回した。
「何だ、志乃。
もしかして、もう滑りに行くのか?」
いちいち分かりきっている予定を確認してくる志乃に、宥志は笑って問い掛ける。
だが、志乃から返された言葉は、宥志にとって衝撃的なものだった。
「まさか。
これから五日間も時間があるのに、今から滑りに行くわけないじゃないすか。
俺は、さっさと一実と二人きりになりたいだけっすよ」
当然だろうとでも言うように告げられた志乃の台詞に、宥志は一瞬固まった。
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