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緩くカーブを描くように伸びた廊下に出た瞬間、前を行く宥志の足が止まる。
突然立ち止まった宥志の背中に危うく突っ込みそうになりながら、征紀もまた足を止めた。
「宥志?
どうかした?」
征紀が不思議そうに問い掛けても、宥志は何も言わずに立ち尽くしているだけだ。
先を見つめたまま動こうとしない宥志に、背後から廊下を覗いた征紀の視界には、二人の生徒の姿。
「あれ?
牧野と志乃じゃん。
お--…ムグッ」
廊下の先に仲間の姿を確認して、声を掛けようとした征紀だが、それは宥志によって阻まれた。
「ンンッ」
「黙れ、征紀。よく見ろよ」
「んん?」
宥志の掌に口元を押さえられたまま征紀が目を凝らせば、何やら二人の身体が異様なまでに密着しているいるのが見て取れた。
どうやら、キスをしているようだ。
「分かったら、大人しくしてろ」
「ん……」
宥志の言葉に、征紀は大人しく頷いた。
それにしても、こんな人目に触れるだろう廊下で、しかも昼間から、あの二人はなんと羨ま…もとい、節操がないのか。
と、そう思ったのは、もちろん征紀で。
征紀だって、許されるなら、宥志と人目も憚らず一日中くっついていたい。
だが、そんなことは天地が引っくり返っても有り得ないと分かっている征紀は、目の前にある宥志の頭を見下ろした。
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