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長野県のとあるスキー場に十数台の大型バスが連なって到着したのは、正午を少し回った頃のことだった。
さらさらの粉雪を受けて、忙しなく動き続けるワイパーの右上には、『統稜学院一行』の文字。
今日は、私立全寮制男子校、統稜学院の冬季合宿初日だ。
全寮制という性質上なのかどうかは分からないが、統稜では冬季に限らず、合宿は全員参加が義務付けられている。
一学年五クラス、計十五クラスともなると、さながら民族大移動。
スキー場に設けられた広大な駐車場にバスが次々と停められれば、先頭の一台から長身の男が雪上に降り立った。
雪を踏み締める独特の音を楽しむようにバスの前方へと回りこんだのは、生徒会副会長の久我征紀(くがまさのり)だ。
征紀は大きく深呼吸してから、次々とバスから降りてくる生徒たちを手際よく並ばせた。
そうして、自分の降りたバスへと再び取って返す。
「整列完了したよ、宥志」
征紀の簡潔な報告に、バスの最前列を占拠して何やら忙しなく書類を捲っている生徒会長こと、御神宥志(みかみゆうし)が応える。
「分かった。
会議室に移動後、部屋割りの発表と注意事項の確認しとけ。
おれは、桜井と一緒に先方に挨拶してから合流するから」
「了解」
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