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粗野な言葉遣いを最も嫌っている桜井は、言葉遣いが悪いという理由だけで三時間にも及ぶ説教をすると、生徒たちに恐れられている。
だが、宥志にだけは、訳あって何も言う事が出来ないのだ。
今でこそ公認のカップルとなった宥志と征紀だが、そうなるまでには数々のトラブルがあった。
極めてノーマルな恋愛思考の持ち主だった宥志と、中等科時代の些細な噂をきっかけに不純同性交遊の常習犯となった征紀。
そこに、風紀委員の顧問でもある桜井の策略が複雑に絡み合って、宥志は征紀と付き合うに至ったのだ。
校内の風紀を乱す征紀を宥志に押し付けたい桜井と、敬語を使うか説教を聞かされるかの二者択一から逃れたかった宥志。
二人の間で条件を出し合った結果、宥志は征紀と付き合い、桜井は宥志の言葉遣いを見逃すと言う形で落ち着いたである。
そんな経緯があって、桜井は文句を言いたくても言えなかったのだ。
まるで代わりだとでも言うように、桜井は馬鹿丁寧な話し方で言葉を返した。
「ああ。
そういえば、そうでしたね。
すっかり忘れていました。
では、ご挨拶に参りましょうか」
「まったく。
責任者なんだから、もう少し自覚してくれよ」
呆れたように呟く宥志だったが、桜井はさも当然のように教師とは思えない台詞を口にした。
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