プロローグ

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 そう、それは暑さも少し収まった秋の一日だった。  親父の転勤についていって俺以外の家族全員がフランスに行ってしまい、俺が独り暮らしを始めてからちょうど半年が過ぎた。  一応母方の伯母が近くに住んでいるが、高校一年から独り暮らし、というのは意外と珍しいらしい。中学時代からの親友である賀茂にそのことを話したら『よく生きてるよねぇ。ボクだったら絶対無理無理無理!気がねなく遊びに行くね~☆』とかやけにハイテンションで言ってやがった。そして実際気がねなく来やがるから厄介だ。  食事は自分で作れるし、金は振り込まれてる。国際母からの心配電話も最初は週十位のペースでかかってきたが、今では週一程度。いやはや慣れとは恐ろしいものである。  家は学校から徒歩15分の場所にあるマンションの一室だ。一人で済む分には狭くもないが、賀茂みたいに賑やかな奴が来るための場所では無いことは確だ。端っこでお隣さんがいないとはいえマンションの防音性能は酷い。
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