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お姫様になった娘は、これでもういじめられないと安心しました。王様は優しく、王子様はお姫様をとても愛してくれました。従者達も、わがままも文句も言わないお姫様を歓迎していました。
ところが、幸せな暮らしも束の間でした。
お姫様は、元々村の娘でした。テーブルマナーも振る舞い方も、何一つ知らないのです。会食ではナイフの持ち方を間違えて貴族の娘に笑われ、慣れない豪華なドレスと高価な靴が、何度もお姫様をつまづかせました。恥ずかしさと、そんな自分への悔しさで、お姫様の花のような笑顔は日に日に曇って行きました。
そしてある日のパーティーで、ダンスが上手くない事を貴族の娘に言われ、とうとうお姫様は泣いてしまいました。
するとそれを見た王子様が、愛するお姫様を泣かせた貴族の娘にひどく憤慨しました。そして従者に言いつけて、貴族の娘を捕らえ、翌日にはギロチンで首をはねてしまったのです。
お姫様はとても驚いて、何もそこまでしなくとも、と王子様に言いました。
王子様はお姫様の黒壇のような髪を撫でると、お姫様は誰よりも美しい、と強く言いました。誰よりも美しいお姫様を馬鹿にしたのだから、いくら貴族の娘といえども、首をはねられるのは当たり前だ、と。
お姫様は戸惑いました。そういうものなのでしょうか、と王子様に聞くと、王子様は勿論だとも、と頷いて見せました。
それから一年が経つと、首をはねられた人数は五十人以上にも上りました。全て、お姫様に陰口を叩いたり、お姫様の失敗を笑ったりした者達です。王子様の耳に入らないように陰口を叩いたり笑ったりしても、それを見聞きした周りの人間が、王子様から報酬をもらおうと言いつける為でした。王子様は誰かをギロチンにかける度、報告者に報酬として、宝石を一つ与えていたのです。
お姫様はもう、自分が原因で誰かがギロチン行きになる事に、すっかり慣れてしまいました。優しい心が罪悪感で壊れてしまう前に、心を守る為、それで当たり前だと高慢になってしまったのです。
優しい心を失ってしまったお姫様は、自分をいじめた村の娘達もギロチンにかけました。
私はお姫様。誰よりも美しいお姫様。だから、何をしても良い。ギロチンから飛んで行く首の不細工な事。私くらい美しければ、お姫様にだってなれたのに。ああおかしい。
自分をいじめた娘達の首が飛ぶ度、お姫様はころころと笑いました。
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