114人が本棚に入れています
本棚に追加
資料には
日付や発見者、場所
生年月日、本籍…
当たり前のことだけが書いてあって
私たちが知りたい自殺の理由については
何も書かれていなかった。
「理由というのはわからないんですね」
「そうですね
客観的な判断だけで自殺になっています。
正直な話を言うと
警察としては
自殺か他殺かの判断だけでいいんですよ。
最近は自殺が多くて
いちいちその理由までは
調べていられません。
意外と身内の方が詳しかったりしますし
精神的な病ということもあります。
そうなったら
理由は病気のため
になってしまいますしね」
言っていることは
間違ってはいない。
母もそんな病気だったのだろうか?
「じゃあおかしなところというのは…」
「これなんですよ」
そう言って溝辺さんが取り出したのは
ビニール袋に入った白い紙。
「遺族の方にお返ししなきゃいけなかったので
渡しておきますね」
私は受け取って紙を広げた。
白い紙は
新聞広告の裏だった。
A3サイズくらいのスーパーの広告の裏に
鉛筆書きで大きめの文字が並んでいた。
読んでわかった。
『遺書』
だった。
最初のコメントを投稿しよう!