お通夜から葬儀へ

4/24
前へ
/56ページ
次へ
「遺書?お母さんの?」 それまで黙って聞いていた 妹が身を乗り出してきた。 しげしげと見つめて 私を見た。 妹も同じことを考えたようだ。 「これ…本当にお母さんの遺書ですか? 字が違うと思いますけど」 先に妹が溝辺さんに聞いていた。 「実はそこなんです。 第一発見者の坂本さん つまりあなた方の叔父さんで亡くなったミツエさんの弟さんも 同じことを言ってました。 字が違う、姉の字ではないと」 私もそう思った。 見慣れた母の字とは違うと思った。 「それで 少し調べました。 自殺教唆ということもありますし もしかしたら 自殺に見せかけた他殺かと。 でも…こっちも見てください」 そう言って出されたのは 家計簿と母が写った写真だった。 「この字と比べてください」 私と妹はじっくりと見た。 「あ…似てる」 全体的には違う字だと思ったのに 一文字ずつ見比べると 角や払いの癖が似ていた。 母は字が汚いからとめったに字を書かなかった。 だから 新聞広告の裏に整然とならんだ字は 母の字に見えなかったのだ。 「お母さんってこんな字も書けたんだ」 妹が言った。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!

114人が本棚に入れています
本棚に追加