お通夜から葬儀へ

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遺書の字は大きめで しっかりと書かれていた。 いつもは雑で読みにくい字を書いていたのに。 「きっと遺書だということで 何回も何回も書き直しんでしょう。 それからこれですが これも遺書のそばに置いてありました」 それは 3月に入ってからとった写真だった。 日付が入っている。 -03,03,12- 亡くなる10日ほど前の写真だ。 裏を見たら 『写真に使ってください』 と書いてある。 写真…つまり遺影。 こんなものも用意していたのなら 覚悟の自殺ということになる。 「そうですね 自殺ですね」 「理由はわかりませんが そういうことになります」 「わかりました また何かあったら相談にきてもいいでしょうか?」 「いいですよ」 私と妹は席をたった。 「ありがとうございました」 「はい、あ…それから 死亡推定時刻なんですが それはあくまで推定ですので…」 「わかっています お世話になりました」 なんとなく歯切れの悪い溝辺さんに頭を下げると 私と妹は 急いで母の葬儀を依頼した葬儀社へ向かった。 遺影にするための写真を替えてもらうのと それから遺書に書かれていた葬儀についての話をするために。
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