114人が本棚に入れています
本棚に追加
葬儀社に着いたら
ギリギリ遺影の変更に間に合った。
「それから…これなんですが…」
私はさっき溝辺さんから受け取った遺書を見せた。
『葬儀は××支部の○○に全部頼んであります。
だから○○に連絡してください』
××支部…それはある宗教団体の支部で
○○とは何年か前に母から聞いたことがある
その団体の支部長の名前だった。
遺書を読んだ葬儀社の人の顔色は変わらなかった。
「ご遺族の考えとしてはどうですか?」
「本人の意志は叶えたいのですが
うちの親族はみんな
その宗教に関しては反対していました。
その宗教に何年か前
弟と入信して
弟はその布教活動で東京まで行き
無理がたたって心肺停止状態で杏○大学病院に運ばれました。
そんなことがあって
その宗教からは抜けるように
さんざんみんなから言い
本人もやめたと言っていたんですが
まさかまだ入信していたなんて…」
「ご家族は誰もご存知なかったんですね?」
「はい」
「今後の法事にも関わってきます。
一度帰られて話し合われてきてくたさい。
まだ時間はありますから」
諭すようなゆったりした話し方で
私たちに言ってくれた。
「そうします。
葬儀だけじゃありませんからね」
「決まり次第連絡してください」
私と妹は今度は急いで
叔母の家に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!