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「え・・・・・・?」
目の前の壮麗な椅子に座っている”陛下”が言った
「聞こえなかったか?神子がそなたを推薦した。そなたには世界再生の旅での神子の護衛を引き受けてもらう」
「・・・・・・・・・お引き受けさせていただきます」
陛下の命は絶対・・・・・・・あたしには引き受けるしか選択肢はなかった。
―――――――――――
救いいの塔が出現してから一週間
衰退世界の神子”ゼロス・ワイルダー”は屋敷の窓からその塔を眺めていた。
「ゼロス様しいな殿がお見えになりました」
執事の”セバスチャン”が足音も立てず近寄り静かに口を開いた
「ん・・・・・通してくれ」
「なんであんたがあたしなんかを推薦したんだい?」
頭の天辺で無造作に結った黒髪を窓から通る風に靡かせて”しいな”が言った
「だぁ~って!あんなむさ苦しいおっさんたちと旅なんて俺様病気になっちゃう!それに女って言ったって貴族の女の子たちはみんなか弱いし♪」
「なんだい!?あたしはか弱くないって言うのかい!?」
「事実そーじゃないのー♪」
淡々と過ぎ行く時間、いつもの
ように小突き合ってこの時間を楽しむ。
もうこうやって過ごすのもあと少し・・・・・天使になれば全てが無くなる・・・・・。
大切な人を作ってはいけない
深入りしてはいけない
結局は全てを失うことになるのだから・・・・・。
俺の命と引き換えにこの世界は救われる
それが”天使になる”ということだ
もう覚悟は出来ている、そのための命だとも理解している。
ただひとつの心残りは・・・・・・・
しいな
何度も突き放した
天使になって俺がいなくなることで、しいなを傷つけるなら
最初から、突き放したほうがマシだと何度も思った
だからあいつに別れを告げたあの日
あいつは泣いた
初めてだったあいつが涙を流したのは
いつだって男勝りなあいつは強かった、10年以上も前の事件の時だってただ一人苦しみに必死に堪えて、たった一人で乗り越えたのだ。
そんなあいつが泣いたそのことに俺はどうしたらいいのかわからなかった。
俺に
「あんたは神子なだけじゃないあんたはあんただ、ただのゼロスだよ」
そう言ってくれたただ一人の女性
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