8人が本棚に入れています
本棚に追加
「チェシャ…猫…」
心臓の音が、やけにうるさい。
まるで耳の中に心臓があるみたいだ。
『……なんだい?』
振り返り、猫の顔を見るが相変わらずのにんまり顔。
「私、誰?」
『アリスだよ』
「違うッッ!!私は…!!」
私は、誰…?
かたかたと、体が震える。
喉の奥から何かが出そうになる衝動を抑えながら、アリスは両腕を握り締めた。
「あ、あ……」
駄目だ。
このままでは…
「あ…あぁ…」
私は……
「あああぁぁ…!!」
壊れて…
『アリス』
チェシャ猫が、私の頬に触れた。
その手は温かく…何故か私は理性を抑える事が出来た。
「チェシャ…猫…?」
『……どうしたんだい?』
にんまり顔のチェシャ猫が首を傾げた。
私は頭を横に振る。
「うぅん、何でもない…」
私は再び歩き始めた。
最初のコメントを投稿しよう!