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再び歩き出したのはいいが…
「…チェシャ猫、一ついいかな?」
『なんだい?』
後ろにいる猫に、私は問いかけた。
「お城って、どこ?」
『…………』
私の質問に、猫が答える事は無かった。
そもそも、こんな質問をした理由は二つある。
一つはチェシャ猫が私の行く方角に何も言わないから。
もう一つは…
「かれこれ、何時間歩いてるの?」
そう、最初にいた所から既に数時間は過ぎている筈だ。
なのに城へたどり着くは愚か、森すら抜けていないのだ。
「…もしかして…迷子?」
『………』
この猫は何も言わない。
アリスは頭を項垂れた。
「何処かで休憩しない?疲れちゃった…」
『いいのかい?』
チェシャ猫が珍しく問いかけた。
その口元が、さっきよりもつり上がる。
『……他の事も忘れてしまうよ…?』
「?!!……さ…」
『さ?』
チェシャ猫が続きを促す様に、アリスの言うことを繰り返した。
「先を進みましょうッッ!!」
涙ぐみながら、私は再び歩き出した。
…早足で。
『休まないのかい?』
にんまりしながら、チェシャ猫が誘う。
しかし私はその誘いを振り切る様に無我夢中で歩き続けた。
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