手を伸ばした

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百キロメートル、と、 六十センチメートル、の差 ちぢまらぬ距離を それでもほんの少し埋めようと、 数メートルの距離を歩いてみるのは ある種の逃避であるだろう。と 冷たく湿ったベランダに立って ふしめがちに、 シャツを透明水彩で汚しては、 ――私はどうも真白ではいられないらしい―― その白を食む想像をしているのだ。 夏のあたたかくはげしい雨が注ぐまでに、 私はあなたにどれだけのことができるのだろう? 益のない、と知りながら、 口の端だけで笑って 真冬の夜空の下でラテンを浴びている せめて戸惑いのままであればよかったのに
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