生きてる

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家にひとり。 皮のままの林檎をがぶり、 お行儀の悪い私 は ひとときの逡巡の末に 指先についた蜜を 舌でぬぐう。 罪の果実なんて陳腐な解釈 私の好みではないのだけれど こうして指を吸って唇で食みながら ふしだらになってしまうのはこの赤色のせいにして この実をかじる度に 果肉、という言葉には違和感を感じるのだけれど 果汁と繊維でできたこのひとかけらを ゆびさきと舌でもてあそぶとき ――この蜜はいうなれば林檎の体液なのだ と 新鮮な気付きがほとばしる もう一口 この甘さはソルビトールだったか ああ あなたの蜜がのみたい
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