helpless nighT

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*K-side* 「ほら」 見慣れない部屋に 見慣れない家具が並んで 仁のにおいに混じって 知らないにおいがする 手渡されたビールを飲みながら部屋を見渡すと 見せ付けるようにわざとらしく置いてあるピアスが目に入った 『……ピアス』 思わず口にした。 あの時のとは違う。 もっとユラユラするような 女の子って感じのピアス。 「あー?…うん。ピアスだね。」 そう言いながら 気まずそうにピアスをポケットにしまい込む仁の手を目で追いかけた。 “…欲しい?” あの時と同じやり取りを期待したわけじゃないけど 大事そうにポケットにしまわれたピアスが嫌だった ちらつく女の影にムカついた 手にしたビールを一気に煽る。 まわっていたアルコールがぶり返す。 もっともっとって体が欲しがる。 誰も見ないで。 俺だけを見て。 俺だけの仁でいて。 あの時の気持ちも 酔いと一緒にぶり返す。 体も顔も熱くて 頭はボーッとする。 喉はカラカラ。 飲み干した缶を床において 目の前の仁に近づいた。 .
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