置き傘

1/1
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/62ページ

置き傘

彼女は僕をじっと見つめ 「誰か傷つけたよ まだ息しててもいいの?」と聞く テレビの灯りが陰を作り出した 机に広げた薬の所為かな   自棄に重く 言葉が沈みだす   少年は まだ 黄色い傘を差し 青い長靴を履いて 流れる水を眺めている 部屋の窓から 僕はそれを それを眺めていた 彼女が見ている 遠い現実の傍で     彼女は擦れた声で呟いた 「誰かが死んだよ まだ息しててもいいの?」と ニュースでも見たのだろう驚いて 零したミルクと甘い夏みかん   外気に曝され 淡い雫を抱いた   少年は まだ 黄色い傘を差し 青い長靴を履いて 流れる水を眺めている 部屋の窓から 小一時間 それを眺めていた 「吐き気がするよ」 彼女は雨を嫌うが 空は生憎 泣いている
/62ページ

最初のコメントを投稿しよう!