♠一番目のアリス♠

7/16
前へ
/106ページ
次へ
ガサリと、近くの草陰から音がした。 「ハハハ、ハ?」 ピタリと静止する私。 (アイツの仲間?) さっきの血の雨とアイツの血で真っ赤に染まった剣を握りしめて、スタスタ物音のした草陰へ行く。 「出っておいで~♪」 剣を横一線に振るう。 草は呆気なく、剣で振るった通りにバッサリ切れた。 そして、そこに居たのは……。 「ヒッ、ヒック、うぅ~、グシッ」 「……子供?」 沸騰していた血液と頭がスーッと冷めた。 よく見たら、腕を怪我していた。 (アイツにやられたのか?) 「腕、大丈――」 「ッ!!(ビクッ)」 ああ、私の事を恐がっているのか。 (そりゃ そうだよな。) 私は自分の姿を見てそう思った。 今の私は、上から下まで真っ赤。 元から赤いのに、アイツの返り血まで加わって、私は真っ赤なケモノだ。 先ほどとは違う感情が私の心を掻き毟った。 「………た。」 女の子の小さな声。 「え?」 「良かった…。 おねーちゃんまで食べられなくって…。」 (あ……。) 事情を察する。 さっきの肉片は、この子のお父さんかお母さんだったんだ。 女の子の顔は、涙と鼻水でグチャグチャになっていた。 「もう、大丈夫だよ。 あの黒いヤツは私がやっつけたから。」 にっこりと私は微笑んだ。 「本当?」 「本当。」 それを聴いて安心したのか、女の子は私にしがみついて、血まみれになるのも構わずに大声で泣き始めた。 それを黙って見ていた私も、今までこらえていたモノが一気に溢れ、溢れ出し、女の子を優しく抱いて一緒に泣いた。  
/106ページ

最初のコメントを投稿しよう!

716人が本棚に入れています
本棚に追加