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ガサリと、近くの草陰から音がした。
「ハハハ、ハ?」
ピタリと静止する私。
(アイツの仲間?)
さっきの血の雨とアイツの血で真っ赤に染まった剣を握りしめて、スタスタ物音のした草陰へ行く。
「出っておいで~♪」
剣を横一線に振るう。
草は呆気なく、剣で振るった通りにバッサリ切れた。
そして、そこに居たのは……。
「ヒッ、ヒック、うぅ~、グシッ」
「……子供?」
沸騰していた血液と頭がスーッと冷めた。
よく見たら、腕を怪我していた。
(アイツにやられたのか?)
「腕、大丈――」
「ッ!!(ビクッ)」
ああ、私の事を恐がっているのか。
(そりゃ そうだよな。)
私は自分の姿を見てそう思った。
今の私は、上から下まで真っ赤。
元から赤いのに、アイツの返り血まで加わって、私は真っ赤なケモノだ。
先ほどとは違う感情が私の心を掻き毟った。
「………た。」
女の子の小さな声。
「え?」
「良かった…。
おねーちゃんまで食べられなくって…。」
(あ……。)
事情を察する。
さっきの肉片は、この子のお父さんかお母さんだったんだ。
女の子の顔は、涙と鼻水でグチャグチャになっていた。
「もう、大丈夫だよ。
あの黒いヤツは私がやっつけたから。」
にっこりと私は微笑んだ。
「本当?」
「本当。」
それを聴いて安心したのか、女の子は私にしがみついて、血まみれになるのも構わずに大声で泣き始めた。
それを黙って見ていた私も、今までこらえていたモノが一気に溢れ、溢れ出し、女の子を優しく抱いて一緒に泣いた。
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