♠一番目のアリス♠

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  ひとしきり泣いた後。 私は女の子に尋ねた。 どうしてこんな所にいるのか。 他にヒトはいるのか。 私の事を知らないか、と。 女の子は私の事を知らなかった。 まあ、期待はしていなかったけど。 女の子は他にもたくさんヒトがいると言った。 この先に小さな集落があるらしい。 どうしてこんな所にいるのか。 女の子は先ほどの黒いヤツに捕まって、運んで来られたと言う。 お母さんと一緒に……。 女の子がまた泣き出しそうになったので、ポンポンと軽く頭を叩いてやった。 「そういえば、名前は何て言うの?」 「ハク。」 小さく、照れながら言った女の子の髪は白で、お似合いな名前だなと思った。 腰まである髪を青いリボンで軽く結っている。 ただ、せっかくの綺麗な白髪が泥と埃と血とで汚れてしまっていた。 「おねーちゃんのお名前は何て言うの?」 赤い、ルビーのようなつぶらな瞳で私を見上げ、今度は私の名前を訊いた。 「……………判らないの。」 「自分のお名前が判らないの?」 女の子が驚いた様子で私を見ていた。 「うん。どうして此処にいるのかも思い出せないんだ。」 頑張って笑顔を作ったけど、多分、笑顔になってないな。 「……じゃあ、 あたしがお名前を付けていい?」 女の子がそんな事を言った。 「良いよ。 ただし、可愛い名前にしてよ。」 名無しは私も嫌だ。 付けてくれるなら嬉しい。 女の子は凄く悩んで悩んで、そして私に、 「おねーちゃんのお名前は“アリス”!」 “アリス”、と名前を付けてくれた。  
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