♠一番目のアリス♠

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  「此処を離れましょう。」 集落の若者がそう言った。 「此処にいては“歪んだ闇”に飲み込まれて、我々も“闇”になりかねません。 此処を離れて、 新しい土地に行きましょう。」 住人たちは呆然となってその若者を見つめていた。 『何を言っているんだ?』 皆がそう思っていた。 集落の年配の者が若者に向かって言った。 「離れてすぐに“歪んだ闇”に見つかったらどうする!!結界の囲いを通り抜けれる程あいつらは強くなっている!! 我々では太刀打ち出来ない!あっという間に全滅してしまう!!」 その言葉に若者は少し戸惑ったが、長老の隣にいるアリスを見るなり、希望を込めて言い返した。 「アリスさんがいる!スペードの剣士様が!!」 アリスは胸元を押さえた。 アリスの左胸には赤のスペード模様が入っているのをつい先日、ハクが見つけたのだ。 「スペードは戦の女神の記し、物語にもそうあるじゃないか!!」 確かにあった。 戦場の女神、スペードの物語。 唯一、“歪んだ闇”を滅せられる存在が戦の女神、スペードだった。 その物語通り、私は強く勇ましかった。 今も“歪んだ闇”の名を聴くだけで体が狂いそうだ。 私はスペードの血を意志を魂を受け継いでいるのだ。選ばれた存在だ。 住人たちは若者を見、アリスを見た。 不安が吹き飛んだかのように皆の目に希望が浮かぶのが見えた。 「アリス様!!戦の女神様!! どうか我々に救いの手を!!!」 心が高揚していく。 気持ちいい……。 アイツをたくさんたくさんたくさんたくさんコロシタイ。 「分かった。皆は私が守る。」 アリスは、狂気の笑みを浮かべていた。  
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