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「以前お見掛けした時からずっと気になっていました。俺と付き合って下さい!」
は……?
それはごく普通の朝の事だった。
通勤ラッシュの電車は苦手なので、いつも出社30分前にこの駅に着く電車に乗る。
その駅で「すみません」と呼び止められ、振り向いたら若い男性が立っていた。
そして、あの台詞。
男性は私の瞳を見て訴えかけてきた。
一瞬からかわれているのかと思ったけれど、その瞳は真剣。……でも。
「すみません、急いでるので!」
危ない危ない、きっと新手のキャッチだよ~。怪しい水晶玉とか売り付ける気なんだ。
あのねぇお兄さん、朝のこの通勤時間帯にスーツ着たOLに声を掛けても捕まる訳ないわよ。
心の中で呟きながら踵を返した。
「待って下さい!」
う、追いかけてくる……。しつこい!
無言で足を早める。
「ちょっと待って……」
わっ、腕掴まれた!!
「……何なんですか!?人呼びますよ!」
向き直って一喝。男性はぽかんとして、その後微笑った。
「やっと、足止めてくれた~」
あまりにも嬉しそうな笑顔に、自分が唖然としてしまった。
「あ、すみません。俺、緑大1年の萩原尋って言います」
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