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救急隊員が倖宏に注意する。
「ゆ…き…、ごめ…」
智貴は、精一杯の力を出して倖宏に謝ろうとし、震えながら倖宏に手を差し出す。
「良いから…、後でで良いから…
お前の意思じゃないこと、分かってるから…
だから…、今はしゃべんな…
絶対に、治せ…
負けんじゃねぇぞ…じゃなきゃ、許さねえからな…」
差し出された手を握り、智貴の顔を覗き込んだ。
倖宏の言葉に智貴は涙を流しながら頷ずく。
「それでは、出しますので…」
救急隊員の言葉で倖宏は、智貴の手を離し、救急車から降りた。
救急車はドアを下ろし、サイレンを鳴らすと、病院へと走行させた。
取り残された倖宏は、力なく立っていた夢奈を優しく抱きしめ、
「あいつは大丈夫だよ…
だから、そんな顔すんなって…
夢奈のせいじゃないから…」
何度も夢奈の耳元で囁いた。
夢奈に言い聞かせるのと同時に、自分にも言い聞かせていた。
「とりあえず、病院に急ご…?」
夢奈は、涙を流し過ぎたのか目が腫れていた。
倖宏の胸が痛む。
夢奈の手を引き、車の前まで移動する。
「智貴君の…車で行くの…?」
不安そうに倖宏を見つめている。
「うん… 時間掛けられないからね…
さぁ、車に乗ろう!!」
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