39/40
前へ
/647ページ
次へ
救急隊員が倖宏に注意する。 「ゆ…き…、ごめ…」 智貴は、精一杯の力を出して倖宏に謝ろうとし、震えながら倖宏に手を差し出す。 「良いから…、後でで良いから…  お前の意思じゃないこと、分かってるから…  だから…、今はしゃべんな…  絶対に、治せ…  負けんじゃねぇぞ…じゃなきゃ、許さねえからな…」 差し出された手を握り、智貴の顔を覗き込んだ。 倖宏の言葉に智貴は涙を流しながら頷ずく。 「それでは、出しますので…」 救急隊員の言葉で倖宏は、智貴の手を離し、救急車から降りた。 救急車はドアを下ろし、サイレンを鳴らすと、病院へと走行させた。 取り残された倖宏は、力なく立っていた夢奈を優しく抱きしめ、 「あいつは大丈夫だよ…  だから、そんな顔すんなって…  夢奈のせいじゃないから…」 何度も夢奈の耳元で囁いた。 夢奈に言い聞かせるのと同時に、自分にも言い聞かせていた。 「とりあえず、病院に急ご…?」 夢奈は、涙を流し過ぎたのか目が腫れていた。 倖宏の胸が痛む。 夢奈の手を引き、車の前まで移動する。 「智貴君の…車で行くの…?」 不安そうに倖宏を見つめている。 「うん… 時間掛けられないからね…  さぁ、車に乗ろう!!」
/647ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9256人が本棚に入れています
本棚に追加