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 和沙が舞台から落ちたと聞いたのは、仕事が一段落した夜中だった。修羅場だった事も手伝って、ピリピリしていた右京が電話線を抜いていたから電話は鳴らなかった。 「貴方って人は……」  半ば呆れたように、和沙のマネージャーである三枝安曇は眉を顰た。 「――…仕方ないでしょう。 ……それは、和沙も、三枝さんも承知してると思いますが」 「―――恋人の意識が戻らないって言うのに、冷静なもんね…」 「焦っても和沙は起きない。それから、和沙は俺の恋人じゃありませんよ」  痛々しく首に巻かれた包帯が、やけに美しく見える。うっすらと血の赤が真っ白い包帯を汚していた。  ピッ、ピッ、と機械音が響く。 「――…和沙、落ちる前に言ったのよ」  和沙はまだ起きる気配がない。  盛大に溜息をついて、右京は安曇を一瞥した。 「……何を?」  次いで安曇も溜息をつき、ブラインドを開けた。暗い病室に月の光が差し込む。 「…『ごめんなさい』」
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