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私は主様に仕える人形。
命令とあらば雑用から殺人まで何でもする。
ただの動く人形。
そんな人形である私の主様は、齢五十程の男性。
短く切り揃えられた白い髪と髭が印象的で、その素晴らしい人徳は私の誇りだ。
その主様に仕え始めた頃、こんなことを仰った。
――そなたは真面目すぎる。もっと体を大事にせよ。
どうして主様がそう仰られるのか、私には解らなかった。
私は人形。
人でなし、代わりなら幾らでも造られる。
それなのに主様は“大事にせよ”と仰った。
どうしても仰られた理由が解らない。
でも命令は命令だ。
逆らうことなど許されない私は、例え解せぬとも従わなければならない。
部屋の掃除等の仕事を必要最低限にし、出来る限り私のボディが痛まないようにした。
埃の多い場所に行く時はマスクや白衣などを装着して細部に気を遣った。
普通ならあまりしない油差しも定期的にやった。
自分を労る事なんて初めてでこれでいいのか解らない。
でもそれ以外方法を知らない私は、それで頑張るしかなかった。
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