黒衣を纏う詩人

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ノアールは昔から増大な魔力を持っていた。   生まれ落ちた瞬間から、その魔力は彼を守る鎧となった。   彼を傷付ける者は即刻排除される。   その力を時の王が見過ごすはずはなく、幼い内から魔法を叩き込まれ、戦場へと送り出された。   何年…もしくは何百年戦ったかわからない。 王が代わり、国が代わり、それでも彼は戦わされ続けた。     爆風が風に浚われ、視界が晴れる。   青い空を仰ぎ見るつもりで視線を上げたノアールは、此方を見ている青年と目が合った。   彼の不思議な金色の瞳を見た、その瞬間…ノアールはこれが運命だと直感した。   いや、もしかしたら彼の中の闇に魅せられたのかも知れない。   「気高き心を持つ不死鳥…か」   小さく呟かれた言葉にフレアは苦笑した。   「俺は普通の魔術師だ。…なぁ、ノアール。お前、俺が飼ってるモノ…見えてるんだろ?」   そんな話をしたのは、人里離れた山の中での事だった。   旅をし始めてすぐの事であったと記憶している。   フレアの飼ってるモノとは、黒い靄の事だ。   勿論、ノアールには初めから見えていた。   それはフレアの魂と深く結び付き、揺るがず崩れず常に其処に存在している。   しかし、それはフレアを傷付けようとはしないのだ。 まるで意志を持っているかのように…   「それらは哀しい歌を口ずさむ。悲哀、憎悪…私はそれらの感情が悪いものであるとは思わない。」   言いながら、彼の赤い髪に指を絡める。 柔らかな感触を楽しみながら、ノアールはフレアの瞳を覗き込む。   光の加減で蜂蜜の様な甘い色から、黄金の様に光輝く色へと変化する。   その美しい瞳を眺める事が好きであった。   ノアールが何をしてもフレアは怒ることをしなかった。   彼はずっとずっと優しかったのだ。   まるで、ノアールが得られなかった多くの愛情を代わりに注いでくれているかのようだった。  
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