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私たちは観覧車に乗った。
夕日を背にして観覧車が回り始めた。
回りながら
ゆっくりと
ゆっくりと
時を刻み始めた。
急に沈黙が訪れた。
喧騒から逃れた私たちをゆっくりとした時間だけが覆いこむ。
「ねえ、由流。
初めて会ったときにね、
私に言ったよね?
『君を見守ってあげる。今までだってそうしてきたのだから』って。」
「うん。そうだね。」
「あれはどういう意味?
今までって?今までも私を見てきてくれたの?」
ああといって
不敵な笑みを浮かべる由流
「あれは、言葉のとおりだよ。僕は君を見てきた。だからこれからもそうするつもりだよ。」
「見てきたっていつから?」
「君を探し始めて、見つけてから。施設に居るときからだよ。」
「なんで今まで声をかけてくれなかったの?」
「君と出会うのは、桜の舞う季節にしようって決めていたんだ。僕達は春に生まれただろう?そこからはじめようって。だから、今日、デートに誘ったんだよ。」
おもむろに袋を取り出した。
「由良、誕生日おめでとう」
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