第十三話

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      ………こんな事を今考えていたら、急に涙が溢れてきました。 瞳の焦点も微妙にズレ、無表情のまま涙が……神崎さん達にバレては面倒です。 柊さんに退いてもらって一足先に海に行って涙を流しましょうか。       『皆さん、僕は先に海に行きますね?先程から早く遊びたくてうずうずしているんですよ』         嘘、こんな理由は嘘。   今の自分が大嫌い。 今の自分が醜い。 今の自分が情けない。     彼女達に嘘を付きたくはありませんが、事が事だから仕方無く………いや、これは言い訳ですね。     綺麗事はいくらでも並べられるし、自分に真実を伝える勇気が無いだけ。   彼女達に愛想を尽かされ、嫌われたくないだけ。   自分自身がそうやって薄い薄い心の膜を固めているだけ。   弱い弱い自分の精神を嘘と言う壁で塗り固めているだけ。         『さぁ、皆さん思う存分遊びましょう?』         こんな自分が大嫌い。     こんな自分の笑顔が大嫌い。     こんな自分の弱さが大嫌い。     こんな自分の全てが大嫌い。             『…はは……自分が大嫌いだ』           海に単身向かう時に呟いたその一言。誰にも聞かれずに、自分自身に語り掛けた一言だった。       (睦月…?)       それが神崎さんの耳に入っていた事に気付くはずが無かった。    
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