第十三話

13/47
前へ
/414ページ
次へ
      僕は上半身裸になり、海に走り込み、取りあえず顔に海水をかけるようにバシャバシャと水しぶきを上げます。   楽しいプチ旅行を、僕なんかの為に暗くしたらいけませんからね。誰にも気付かれぬよう注意しないといけません。     特に神崎さんには…注意です。 彼女は勘が鋭いですし、どうも心配をかけさたくないのです。 確かに柊さんや門宮さんにも心配をかけさたくないのですが、何故か神崎さんには一番知られたくないんです……       『いつも通り…いつも通りの対応を……それが自然、それが日常』       そう自分に言い聞かせ、精神を落ち着かせます。 勿論彼女達に背を向け、決して顔は見せません。きっと僕は醜い顔をしている事でしょうから……     嘘つき、裏切り行為と言われても良いでしょう。   もしも愛想を尽かされたならば、潔く僕は姿を消しましょう。   もしも白い目で見られても、壁を作られても、僕はそれを受け止めましょう。         『それが僕に出来る最善の行動だから』       「何が最善の行動なんだ?」         っ…!迂闊でした。   まさか神崎さんが音も無く背後にいたとは………しかし、心の中までは分からないですから、話はいくらでも合わせられます。     『いえ、この二日間を有意義に過ごすために僕の最善の行動をしよう……と言う事です』   「ふむ、そうだな。私もそれには同意する」         危なかった……本当に危なかったです………思った矢先に知られたらどうしましょうかと…   それにしても神崎さん、あなたは忍者ですか?波を裂く音もしなくて、僕の背後にいるとは恐ろしや。       「睦月、こっちを向いてくれ」   『何です――』       バシャッ、と海水を顔にかけられました。海水が目に入って猛烈に目に激痛が走ります。   思わず目を押さえ「うぬぁぁぁ…!」、と声を出してグルグルと体を回してしまいました。     しかし痛い!目が焼けるように痛い!海水って塩分の塊みたいですから…!      
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16602人が本棚に入れています
本棚に追加