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突如として白みを増した意識。波が止めどなく流れる音がする。
体が熱い…頭が痛い…
しかし、起きなければ……
『っ…』
目を覚ました時、視野には木材で造られた天井が広がっていた。
頭にはタオルが乗っていて、頭を冷やされている……
『ここは……っがぁ…!』
再び、頭を貫かれたような鋭痛が迸る。思わず頭を抑え、その場にうずくまった。
ここは屋内…誰かが連れてきてくれたようですが、僕は一人にならなければいけません。
タオルを外し、フラつく体を支えながら立ち上がります。
どうやら海の家の奥らしく、賑わいがありました。
奥と言うのは店員の休憩室であり、僕はそこに運び込まれたみたいです。
僕は左手で頭を抑えながら休憩室を出たら、沢山の人が海の家で食事をしたり、談笑などをして賑わっていました。
しかし、今の僕には地獄絵図のようにしか見えません。
互いに笑う合う声、顔、気配全てが…僕の心を急速に凍らせていく……
くだらない…実にくだらない。
僕の心は凍え、次第に頭痛も引いていく。
頭に唯一浮かぶのは夢の中に出てくる女性のみ。
冷めた瞳で見ていた僕に近寄ってきたのは一人の女性。恐らく海の家の店員なのか…はたまた僕を連れてきた本人なのか……
「良かった、起きたのね?砂浜で倒れていたからびっくりしたわよ…?」
年齢は明らかに僕よりも年上で、二十歳前半でしょう。
海の家と書かれたエプロンに、緑色の三角巾を頭に巻いていました。
『すいません、ありがとうございました。助けていただいて感謝します』
「気にしないの。困った時はお互い様よ?」
『わざわざありがとうございました。恐らく共に来た友人達が探しているかもしれないので、僕はこれで失礼します。
お昼は是非ともここで食事しようと思います』
僕は店員の女性に頭を下げ、足早に海の家を去りました。
「あれが睦月君…ね…祐介君の言った通り、私の顔も忘れてしまったようね」
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