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海の家を出た僕は時折片膝を砂浜に付けながらさまよい歩いていました。
宛も無くフラフラと……一人でいたかったんです。
しかし、その要望もすぐにかき消されてしまいました。
「睦月…!探したぞ…!」
腰まで伸びた綺麗な黒髪を後ろで一つに束ね、ビキニにパレオと言った服装。
眼鏡は外しているのか……神崎 椎名さんが息を切らして膝に手を着いて、僕の前に回り込んでいました。
僕は顔を横に向け、目線を下に落として顔を合わせません。
今は誰にも関わりを持ちたくないのです。
『まだ用事が済んでいないので、神崎さんは皆さんと遊んでいてて下さいよ』
「こんな人気の皆無な場所で…か…?もしもこんな所で用事があるとしたら……一体何の用事なんだ?」
別に…良いじゃないですか…僕の勝手です。いつも鋭い神崎さんなら分かるはずですが……まぁ良いです。
僕は神崎さんに顔を合わせ、完全に凍った笑顔で神崎さんに返事をします。
『少し…クラスメイトに頼まれた物がありましてね。それを探していたんです。これは必ず僕一人で行ってほしいと言われ、内緒で行っていたんですが……』
これも嘘。
クラスメイトからは何も言われていないし、何よりも左目が未だに不自由だからむしろ気を遣われてしまう。
嘘で嘘を塗り固め、その内全てを嘘一色に塗り潰してしまうでしょう。
「……嘘をつくな……!」
えっ…?
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