第十三話

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      「何だその瞳は…!?完全に光を失っているじゃないか…!」   『瞳に光が無い?馬鹿馬鹿しいです。そんなの分かる訳がないし、無いからと言って何なんですか?』       彼女は何も悪くない。 ただ、僕の虫の居所が悪いだけであって、彼女に当たる道理は無い。     「何か…悩んでいるのか…?」   『悩んでなんかいませんよ? 正直…少しイライラと気が立っているだけなので……僕から距離を取ってもらえませんか? 勿論落ち着いたらちゃんと合流致しますので』         本当は悩んでいる。 自分の記憶について。 記憶の中の女性について。 そしてその女性の現在の状況と、正確な人物像の把握……       「私じゃ…力にはなれないのか…?私じゃ睦月のイライラを取り除けないのか…?」   『願わくば、僕を一人にさせてくれるのが一番です。あまりにも近くに居られると、僕自身神崎さんに手を出してしまうかもしれないから……』     女性だけには手を出したくない。それも理性のタガが外れた場合は、最早どうにもならない…… ともかくそれだけは避けたい。       『いわゆる放置プレイって奴ですよ。神崎さんみたく僕はドMではありませんが、誰だって孤独になりたい時もあるんです』       僕は再び歩を進め、神崎さんの横を通って先へと行きます。   このまま帰って下さい。   その思いながら歩き続け、ある程度神崎さんから距離を取ったその時、遂に僕の精神が限界を迎えました。     全ての音が消失し、口元は怪しく口角を上げ、左手で顔を押さえて空を見上げる。         『アはハハはハは……!モウ…だメダ…ツカれた…ツカれたヨ…こワレるヨ…』         アはハハはハはは……!!!   はハハはハァぁッ!!    
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