第十三話

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        遂に手を染めてしまった。もう後戻りは出来ないだろう。 いくら何でも、あそこまでやってしまったら完全に遠退いたと思う。   言い訳かもしれないが、あれだけで済んで良かったかと…言い訳ですね。   ですが、今の行き先で頭が冷えました。体も冷やすために、少し海に入りましょうか。       『冷たい』     まるで、僕の凍り付いた心のように冷え切っていました。太陽光で火照った体が熱を引いていく。   体の力を抜くと、ふわりと海面に体が浮かび上がる。 ゆらゆら、と波に体を振られ、暖かな日差しが僕に降り注ぐ。   僕の器はあまりにも小さ過ぎる……お猪口一杯も無いのではないか? 心配してくれた人に対し、僕は力でねじ伏せてしまった。 心配してくれた人に対し、僕は冷徹な返事をしてしまった。     情けない。     このまま流されて、どうにでもなればいい…そうしたって、戒めにすらならないか……         僕は体に力を入れ、岸へと向かって泳ぎ始めた。     彼女に謝るため…と、もう一度仲を取り戻したいがために……    
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