第十三話

26/47
前へ
/414ページ
次へ
      私は何故か睦月と目を合わせ辛かった。先程のやり取りもあり、睦月の反応が少し怖いんだ。   だが、そんな思いとは裏腹に、睦月は私の前に来て頭を下げた。       『ごめんなさい…!色々酷い事をして、傷付けたりもして……男として最低でした!』       その言葉を聞いた時、私の胸の中にあった重りが消え去った。 私は睦月に頭を上げさせ、しっかりと瞳を見ながら微笑んだ。     「私も悪かった。無闇に突っ込んだ故の仕打ちだと思えば良いんだ。 それよりも少々小腹が空いてしまったなぁ…あぁどうしようか」         自分でも恥ずかしい位わざとらしい話の切り替えだが、睦月は意図を汲み取ってくれたのか笑顔になって私達を連れて行ってくれた。     仲が戻った睦月が言うには、海の家で睦月を助けてくれた……と言う、あまり理解出来なかったが……人に昼食を取る約束をしたらしい。   だから私達は海の家に向かった。                       海の家は、昼時を少々過ぎた今になっては客が皆無であった。 いたとしても、指で数えられる程の者であり、それぞれのんびりと過ごしていた。     話は少々変わるが、この海で「ナンパ」と言う妙なやり取りをしている輩が一人もいない。   ふむ、雅や飛鳥のような綺麗な者がいたら、軽い男ならイライラする程しつこい………らしい。   そんな軽率な行動をするから男は嫌いなんだ。 無論、睦月はそんな事をしないし、心から愛しく思えるんだ。       「そうそう、しーちゃん? 気になったかもしれないけど、この街じゃナンパ行為をする人は絶対にいないんだ☆ 睦月君のバイトしている喫茶店のマスターいるでしょ? マスターがこの街の全ての情報を手中に収めているらしいから、悪事なんかは絶対に起こらない安心な街なのだ! それでも悪事を働こうとしたら……あはっ☆」       私の心をまさに読んだかのように、雅が説明してくれたのだが…背筋が冷えたよ。 あのマスターが情報屋とは知っていたが、まさかここまでとは……末恐ろしい。   だが、マスターならばやりかねないと思ってしまう私がいる。       「うーん、本当だよね。マスターならやりかねないよねー」       私的には雅もなかなか恐ろしい存在だぞ……読心術はするし、超人的な身体能力だし……    
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16602人が本棚に入れています
本棚に追加