第十三話

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      「当店自慢の明日原焼きそば、美味しく頂いていてくれますかな?」     女性店員は幸せそうな顔をして聞いてきた。元々フレンドリーな性格をしている雅はそれに反応し、瞳を輝かせながら何回も頷いている。     飛鳥は睦月の腕にしがみつき、睦月を壁にして女性店員から距離を取っていた。   一方睦月は眉間に少々皺を寄せ、何かを思い出すかのように目を瞑っている。         「ウチは安くて美味しい、がモットーなのよ。だからあなた達みたいに、笑顔で食べてもらえるのが目的で働いているの」     「おぉ…凄い!まだ全然若いのに…凄い志だね☆」   「あぁ、確かに凄いな。私達より少し…年上みたいだが、素晴らしい」       むっ…?この女性、どうやら化粧と言う物をしていないようだ。 雅や飛鳥も化粧をしていないが、彼女達は化粧など遣わなくても間違いなく綺麗だろう。   私は…自信は皆無だな。 若干視力が低いから眼鏡も掛けているし、そこまで顔も良くない。   ………ふふ、そんな事はどうでも良いか。       『あすはら…?あすはら…っぐ…!』   「睦月!?」     睦月が突然左手で頭を抑え、体を震えさせ始めた。私達は睦月の異変に慌て、唖然としてしまう。       睦月は数分間頭に激痛を感じていたのか、大量の冷や汗をかきながら息を切らしていた。   女性店員は冷やしたタオルを睦月の顔に叩き付け……叩き付けた!?     『あぶっ!?』   「あはははっ!睦月君があぶっ、だってー!」       笑い事じゃないぞ雅。       「駄目よ?無理やり思い出そうとしたら……捻り倒すわよ?」     顔は笑っているが瞳が一切笑っていない店員……やはり私の周りにまともな人が少ないっ!       「…よしよし…しいな良いこ良いこ……なのー」   「飛鳥…飛鳥は優しいぞ…」       思わず睦月ごと飛鳥を抱きそうになったのは私だけの秘密。    
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