第十三話

29/47
前へ
/414ページ
次へ
        しかし、この店員……初対面にしてはあまりにもおかしな点がある。   先程の睦月の頭痛を「無理やり思い出そう」……だと?まるで睦月が記憶喪失と言うのを知っているような……   それに、睦月が何かを呟いた途端に頭痛を……この店員に何か秘密があるのか…はたまた、睦月の記憶に何等かの干渉をしているのか……       「一応言っておくけど、私は彼の事を知っているから。勿論、記憶喪失だって事も把握しているし、マスターにも通じているわよ」     「…ぇっ…!?」   『前の僕が…あなたに…?』       飛鳥によって目を、冷やしたタオルでグルグル巻きにされた睦月は視界が封じられたまま店員へと顔を向ける。   皆同じように、店員が睦月に通じている事に驚愕し、目線が店員へと向けられていた。     それは私も例外ではなく、睦月と店員を交互に見つめている。       「一応これが私の連絡先だけど、話を聞きたいなら覚悟をしてね?………軽い気持ちで聞いてきたら絶対に許さないから」     『……肝に銘じておきます』   「なのー…!」   「了解だよっ☆」   「うん、把握した」           テーブルの上に紙に書かれた連絡先を手に取ると、店員はどこかへ行ってしまった。     それから、私達が焼きそばを食べ終えた丁度その時、頼んでいたかき氷が届き、それぞれが再び食べ始めた。   私は皆が目を強く瞑ってかき氷を食べた時特有の痛みに耐えているのを楽しんで見ていた。       だが、その視線がいけなかったのか……皆から各々かき氷を差し出されてしまった。   雅が苺味をスプーンで掬い、差し出してきたので断る事も出来ずに…頂いた。 飛鳥もブルーハワイ味を同じように掬って差し出してきて、やはり断れずに頂いた。     睦月が差し出してきたときは本当に焦った。 同性だから気付かなかったが、これは俗に言う「あーん」などと言う行為……今更ながら恥ずかしくなってしまった。   しかし、睦月の申し出だけ断るのは少々酷いかと………だから頂いた。           かっ、勘違いは駄目だぞ!? べべべ別に私は睦月にされるのが恥ずかしいのではなくて、人の目が気になるんだからだぞ!?       「しーちゃんは素直じゃないなぁ…☆」     ちちち違うぞ雅!!  
/414ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16602人が本棚に入れています
本棚に追加