第十三話

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      僕が上がって部屋に戻ると、浴衣に着替えた神崎さんが濡れた髪をタオルで乾かしていました。   そうそう、僕も風呂場に置かれていた浴衣を着ています。 紺と灰、二色が交互の縦線となって描かれていた極普通の浴衣。         「うん?睦月も上がったか。こっちへ来てくれないか?髪を見せてくれ」   『まぁ…良いですが、変なことはしないで下さいね?』       部屋にあるベッドの真ん中へ神崎さんは座り、僕は背中を神崎さんに向けて座りました。   別段殴られる訳でもないし、拒否する理由はありませんから。         「睦月は綺麗な髪をしているな、まるで女のようだ。」   『さぁ…?手入れとかは……昔の僕がしていたんじゃないですか?今はしていませんがね』     「そうか………って睦月、髪が乾いていないじゃないか。生乾きは駄目だ、今拭いてあげよう」         僕は自然乾燥派です。 水気は軽く取ったんですが、やはり怒られてしまった……   神崎さんは自分が使っていたタオルを僕の頭に被せ、更に水気を拭き取ってくれ始めました。     ……良い匂いです。 思わずうっとりとしてしまいそうな…甘い匂い。 そう言えば、神崎さんの髪を拭いていたのに湿っていないのだろうか…?       「睦月は面白いな。怒ったり笑ったり、少年のように幼い部分もあったり………これが睦月の魅力なのかもしれないな」   『失敬な、少なくとも昔はそんな感情は持っていなかったぞ』       って、あれ?口が勝手に…!?     「…久しぶりに、本気で甘えたくなってしまった。何故だろうか、今無性に睦月に愛でてほしくなったよ」   『随分唐突ですね。しかし、頼ってもらって構わないです。ストレス解消のはけ口でも、相談相手でも、何でもどうぞ』         そう言ったら、神崎さんは髪を拭く手を止めました。 僕は神崎さんから嫌な雰囲気を感じ取り、素早く両手の範囲内から脱出します。       「じゃ、じゃあストレスのはけ口ならぬ…性欲の相手を――」   『そんなに叱られたいんですか?それなら別に良いですよ?ただし、精神的にボロボロにしてあげますから』         神崎さん、最近変態になってきました。これも門宮さんと過ごし――ゲフンゲフン。    
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