第十四話

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        僕が柳葉君に連れてこられた場所は、この街が一望出来る高い高い丘……     「さて睦月、ここに来て何か思い出した事は何だ?」       それは…僕が記憶喪失になった原因である場所……   「違う、そんな物はどうだって良い。俺が聞きたいのは最も大切な事だ」     『……約束……少女との…』       頭の中でフラッシュバックする…過去の光景が…過去に契られた約束が……せき止められていた水が溢れ出すように次々と……       この場所     約束     少女     大切な約束     思い出     関わり             頭の中で全てが混ざり合い、世界が狂い始める。 浮かび上がるは皆、僕と少女が共にいる……   僕と少女が笑っている。   僕と少女が泣いている。   僕と少女が怒っている。       全部、全部の記憶に少女が存在している……嬉しい時も、悲しい時も、怒った時も……ずっとずっと…一緒に……           「さて、俺から一つ……殴らせてもらう…殺す気で」       ―――ドガッ!!!         口の中に広がる鉄の味。全身を地に叩き付けられた鈍痛。尚も狂い続ける脳世界………   僕は柳葉君に頬を殴られた。 ただ、それだけは理解した。   そして、理解した途端に疑問までが湧き上がる。         『何でっ――』   「分かんないなら分かるまで殴り続けてやる…!てめぇが裏切ったからだ……てめぇが約束を破ったから…!!」       柳葉君は仰向けになった僕の腹部に跨り、胸倉を掴んで引き寄せてきた。   約束を…破った…!? 裏切った…!?     「分からないようだな…!」     一撃     「てめぇが彼奴を…!」     一撃     「てめぇがこんな事をするから…!」   また一撃、と打ち込まれる拳と柳葉君の言葉……痛みにより、思考は覚束ない。         しかし、ただやられるのは出来ません。やられたらやり返す、何故かそれまでも頭に浮かんできた。   放たれる拳を鷲掴みにし、隙だらけな脇腹に拳を叩き込む。      
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