第十六話

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        生憎、二人の点数は全く同じであった。柊のために点数は伏せておくが、可もなく不可もなく…な点数だった。   これには流石の門宮も言葉を失い、何やら気まずい雰囲気がこの場を支配していた。     ………畜生、若干期待していたのにな。これは何とも酷い状況だ。         「うみゅ……これはおあいこ…なの。だから二人共互いの好きな事聞くのー」   『俺は別に構わないが、柊は良いのか?もしかしたら俺は酷い命令をするかもしれないんだぞ?』     「えへへ…私はむつきなら良いよ…?口調や性格が変わっても、雰囲気が優しいの……」           それは、今まで人との関わりを極端に嫌っていたが故に得た、特有の感覚なのか……とにかく、柊は人の善悪の把握が多少なりとも出来るらしい。     雰囲気が優しい、ねぇ…?     そう思ったのは、間違いだったな。俺は優しくも無いし、人を愛する資格も、人と深く親しくする資格も無い。   あるとすれば…皆の顔色を見ながら人生を渡り、自分の周り全てに一線を引き遠くから見ることだけであろう。       じゃなければ、遙か前に俺の精神は完全に崩壊してしまうから……負の感情に飲み込まれてしまうから。   それは絶対に避けなければならない物であり、己の中で禁忌とされている物。   だから……だから……           『あぁ、本当に良いなら今夜、して欲しい事を言い合おう』           俺は偽りの仮面を付け続ける。   例え記憶を失った時に作り上げた笑顔であろうとも、あくまでも 作 り 上 げ た 笑 顔 なんだから……     俺は皆の思いを裏切り続ける。   それが唯一、俺を離れて行ってもらう手段なのだから……      
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