第十六話

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      さて、一段落着いた所で…買い出しにでも行くとしよう。 足りない用品もあるかもしれないし、商店街の住民達の挨拶もしないとな。     「睦月君、今回はこれらをお願いするよ。僕がお客さんの対応をするから、行ってきてくれないかな?」         マスターは俺に内容を書いたメモを渡し、俺は喫茶店を出た。 だが、何故だか分からんが、神崎が後ろについて来た。   ……何故だ。       『何故ついて来る…?神崎は柊と門宮と珈琲を飲んで話をしていたじゃないか』   「そんなに冷たい言い方しなくたって良いじゃないか。私だってお礼に手伝いをしたいんだ」     『そんな物は要らぬお節介だ。客に手伝いをさせたら俺のバイトに対するプライドが許さん』         これは本音。 安らぎを送らせるための喫茶店なのに、店の手伝いをさせるなど言語道断。   故に帰らせたい……が、こいつの性格からして何かしら理由を付けてついて来るであろう。       『仕方ない…ついて来るだけ。荷物を持ったり、邪魔をしない。 それが条件だ』   「善処しよう。 だが、不純な動機なのだよ。 睦月ともっと長い間一緒に居たい…と言うな……駄目か?」     『勝手にしろ』       こいつはこいつで純粋なんだな……まったく、親の顔が見たかった物だ。 そう言えば、神崎は眼鏡をしているが視力が悪いのだろうか?     『神崎は視力が悪いのか?』   「うん?…あぁ、眼鏡か? 実はこの眼鏡は伊達でな……雅の勧めで掛けているんだが、似合わないか?」       なるほど、門宮の性格なら言いそうな姿をしているからな神崎は。 だが、眼鏡をしていない神崎は見慣れていないからな……風呂上がりや眠る時位しか外していない。   ……不覚にも、眼鏡を外した神崎を想像してしまった……       『似合わない事もない…が、俺は眼鏡には偏見があってな。 どうも眼鏡をしている奴は、如何にも勉強が出来る…と言う風に感じるのさ。 実際神崎は出来ているがな』     「ふふふ、お褒めの言葉を頂戴しておくよ。 眼鏡は今度から外そうか…睦月を見るときにレンズ越しでは壁があるように見えるしな」           あら…?俺もしかして余計な事言ったか…?  
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