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ふむ…次は酒屋か。
取りあえず歩は進めるが、今は神崎を何とかしないといけなくなってしまった。
神崎は八百屋に着く前に、商店街のみんなから彼女だのなんだの言われて押し黙っているからだ。
『ほら、ちゃんとついて来い。離れるんじゃない』
「う…うん…分かった」
事故に遭われたら俺がみんなから半殺しにされるからな。
ちゃんと俺が見ておかないと駄目じゃないか……頼りなさ過ぎるぞ。
俺は神崎に手を差し出し、神崎はゆっくりと手を握った。
離されても困るので、指を絡めるようにしてがっしりと掴む。
『普段こんな風に手は握らなかったからな…?上の空で歩かれても困る』
「………恋人…繋ぎ……」
『やかましい、今更そんな事で照れていてどうする。行くぞ』
俺は神崎の手を引っ張りながら歩みを進める。手を繋いでいて悪い気はしないな。
……もしかしたら俺は神崎に惹かれて行っているのかもしれない。
神崎の大胆さ、消極さ、性格、雰囲気…それが俺まで惹き付けるのかもな。
まだ恋心まで発展はしていないさ。こうやって過ごしていたらいつか、恋心になるだろう。
だが、神崎にはそれは伝えない。心の整理が出来たならば、話そうか……
酒屋には数分で到着し、俺は神崎の手を離してから店内に入った。
この酒屋の店長は女性。
更にかなり若く二十代らしい。
本人曰く、年齢は秘密だそうで正確なのは知らない。
どうやら店内を掃除中だったらしく、ピンク色のエプロンをして、はたきをパタパタと動かしていた。
俺が入ってきたのに気が付いた店長は掃除の手を休め、近寄ってくる。
化粧も薄く、淡い紅色の口紅をしていて、香水もほんのりと甘い香りがしているのが感じられた。
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